地球温暖化により、もたらされる異常気象や、様々な弊害がとりざたされる中で、これは良い影響だと考える人々もいます。
それは、地球温暖化をビジネスにする人々です。
人間はたくましい生き物ですね。
そこに、目をつけて早々から動いていたケースを紹介します。
目次
ドイツ銀行
今までの地球温暖化の問題を逆手にとり、ビジネスになると目をつけた人々にとっては、地球温暖化は良い影響なのです。
ドイツ銀行がアメリカ各地で展開していたイベントにこんなものがありました。
ジャングルをマンハッタンに再現し、奥行き18メートル、間口は9メートルというテントの天井は透明で入場者からはマンハッタンの高層ビル群がかろうじて見える。
外は4℃という寒さの中、テントの中は熱帯の気温に保たれていました。
長さ2メートルものアナコンダを首にかけた蛇使い、コンゴウインコが2羽、近くには作り物の滝。
アマゾン風の衣装を身にまとった踊り子の一団がいる、オーガニックスムージーを無料で提供しました。
まるで、地球温暖化問題のひとつであるアマゾンの森林を彷彿とさせます。
「投資環境は変動している」という巡回宣伝のうちで、一番お金をかけたもの。
この数週間前にはビバリーヒルズで、スキー場と前長30メートルのスノーボードスロープが作られました。
このときには、鹿の角でできたシャンデリア、ドイツ銀行のロゴが入った氷の彫刻群が立ち並んでました。
スキーヤーに扮したモデルたちに、プロのスノーボーダーも呼ばれ、アイスランドから取り寄せたペットボトル入りの飲料水がていきょうされました。
地球温暖化により失われつつある寒さや、極域での生物を彷彿とさせます。
この二つのイベントだけで、ドイツ銀行は150万ドルかかったそうです。
しかし、「カーボンニュートラルだ」そうです。
理由はイベントでの温室効果ガスの排出は、インドでのバイオガス・プロジェクトへの投資により、帳消しになるから。
ドイツ銀行は地球温暖化をテーマとするオープンエンド型投資信託を設定していました。
この投資を扇動するための宣伝だったので、地球温暖化を髣髴とさせるようなPRイベントだったのです。
が、ジャングルパーティー3時間の間に排出された温室効果ガスは152トンで、これは平均的なインドの人の人生で言うところの3回分もの排出量になります。
このイベントでは、地球温暖化対策株投資は、気候変動のいかんに振り回されることなく、気候変動関連投資の最先端を行きます」というものでした。
ドイツ銀行のイベントを例にあげましたが、地球温暖化が良い影響だと人々、投資会社の考えはこうです。
「気候変動にまつわる議論は、コストとリスクから離れ、胸躍るチャンスの数々をどうつかむかというテーマへ移りつつある。」
地球温暖化における気候変動では、生態面では悪い影響ばかりです。
ですが、気候変動ほどの大規模で、そうそうすぐに変化のない出来事は、金銭面では良い影響へ働くこともあるのです。
シェル石油や大手石油会社、国家企業が集まって行われた会議で①
地球温暖化により、北極海の氷の範囲が、約130万平方キロメートル失われた翌年のこと。
シェル石油が、アメリカのコノコフィリップスや、エクソンモービル、フランスのトタル石油といった、世界的に有名な石油会社。
さらに、ノルウェーのスタイトル、ロシアのガスプロム、イタリアの炭化水素会社などの大手国営企業も参加開催された「北極フロンティア」という会議がありました。
皆さんもご存知のとおり、地球温暖化の原因は、化石燃料が由来の二酸化炭素の排出にあります。
それにもかかわらず、この会議では、北極圏をどう開発するべきかでした。
地球温暖化により、北極圏の氷がとけ海面上昇の問題などよりも、その氷が解けたことを、ビジネスチャンスとした会議だったのです。
ノルウェーの石油、エネルギー大臣は「氷の融解は、好機でもあることに気づくべきである」と発言。
アラスカの北方研究所の研究員は「石炭も、世界の既知の埋蔵量のうち、25%が北極圏にあります」と発言。
ノルウェーの社会学者は「北極気候影響アセスメントは、地球とガスの生産が、地球の気候変動にどう影響するかではなく、気候変動が石油とガスの生産条件にどう影響するかをみるものなのです」と発言。
こうした発言が相次ぐなかで、2日目のセッションで世界自然保護基金の北極圏プログラムの責任者が登壇しました。
セッションのテーマは「環境問題・危機管理と技術的解決策」です。
はじめに語られたのは、「50年に1度洪水に見舞われる地域に家を建てるか?」から「100年に1度深刻な事故が起こるのを許す基準を設定しますか?」との問いかけからでした。
「答えは「ノー」ではないでしょうか?」と彼は続け、「それなならば、この地球でもっとも創意に富んだ聡明な種である我々は、今私が述べたものよりも遥かに危険な行動を取り続けるのでしょう?」と、続けていきます。
それから、彼は次々に事実を挙げていきました。
北極圏の温暖化のペース、グリーンランドの氷床の縮小、シベリアの増水した川のせいで速まる海面上昇。
大気中の二酸化炭素の濃度が毎年1.9ppmの割合で増え続けており、これは、過去30年間の1.5ppmという数値を上回ること。
自然界の二酸化炭素の吸収源(海洋や、植物)は、今では50年前よりも1割少ない二酸化炭素しか受け入れられず、地球温暖化対策としての緩衝装置としての効率が落ちているということ。
さらに、世界の大手石油企業のそうそうたる面々を前にして、「2000年以来、化石燃料からの二酸化炭素排出の増加率は3倍になりました!1900年代と比べて3倍です!」と言いました。
「IPCCが想定しているうちで、もっとも排出量の多いシナリオさえも上回っているのです!」と、彼はグラフを見せ赤い線を越えていることを示しました。
そして「では、まとめに入ります、2年間で海氷の面積が22%減りましたが、みなさんは何もなかったような顔をしています。この4年間で北極圏の氷の8割が失われました。それなのに、これが当たり前であるかのようなふりをしています。」ここで彼は徴収を見回します。
「というわけで、どんな結論が下せるでしょうか?」と、問いかけました。
「王様は裸だ、ということです。北極圏で石油とガス関連の活動を拡大すれば、温室効果ガスの更なる排出を招き、それによって地球温暖化がいっそう進み、地球のシステム全体が変化し、それが北極圏にも、全世界にもはなはだしい影響を与え、皆さんにも私にも害が及びます。わたしたちはパラドックスのただなかに生きているのです。」と言いました。
それから彼は、北極圏での海洋石油、ガス開発をすべて一時的に凍結するようにするよう求めました。
パラドックスとは、正しそうに見える前提と妥当そうな推論から受け入れがたい結論を得ることをいいます。
シェル石油や大手石油会社、国家企業が集まって行われた会議で②
ここで出された明らかなパラドックスに対してシェル側は用意周到な回答をしました。
最高戦略責任者のブラーウ氏は、別の会議でこう述べました。
「私はパラドックスがあるとは思いません。
話は非常に単純です。
今日この地球には96億人が暮らしています。
2050年には90億人になるでしょう。
急増する需要、とくに、中国とインドの需要を満たすためには、多種多様なエネルギーを同時に開発する必要があります。
そう、再生可能エネルギーを、ますます増やさなければなりません。
二酸化炭素の排出量も減らすことも求められます。」
しかし、化石燃料と原子力も欠かせません。
これらすべてが必要なのです。
在来型の石油とガスの資源が枯渇してゆくので、非在来型の資源や、非在来型の場所に目を向けなくてはなりません。
そして、まさにここで、北極圏の出番となるのです。」
シェルのエグゼグティブたちは、北極圏に関する自社の野心が、海氷の融解と結びついていることを示唆するような発言は入念に避けています。
地球温暖化による気候変動の影響が表れたから、北極圏に関心をもったわけではないと、いうのでした。
まとめ
地球温暖化の影響で、良いことは、地球温暖化を逆手に取ったビジネスチャンスができたこと。
そのビジネスが、さらに地球温暖化を加速させるものであるのならば、世界自然保護基金の北極圏プログラムの責任者のいう、パラドックスにあたります。
しかし、炭素由来のエネルギーに頼らない新エネルギー開発事業であれば歓迎できます。