地球温暖化の影響は医療にどう関わるかについて3つの視点でまとめてみました。
1平均気温の変化。
2新薬の開発。
3感染症の拡大。
地球温暖化の影響は、医療界にとってはあまりいいことはないようです。
地球上に住む生物の中には、人間もいます。
生物多様性の視点で見ていくと、地球温暖化により元気になる生物もいれば、人間のように命を脅かされるものも出てきます。
人間にはまだ知恵があり、なんとか生きながらえることができるでしょう。
しかし、自然の摂理に淘汰されて消え行く命もたくさんあります。
淘汰される命の中には、微生物などの目に見えない命も含まれます。
こうした命は地球温暖化の影響をうけ、人間の医療面にも影響をしてくるのです。
目次
地球温暖化の影響で平均気温が変化したら
これは日本ではなくイギリスでの地球温暖化の影響にともなう気候変動で医療に及ぼす影響を推測した結果です。
2050年までに、暑さに関する死亡率が現在から約2.5倍増加するとされています。
調査方法は過去の平均を大きく上回る暑さ、また下回る寒さとなった場合の死亡率をまず評価します。
イギリス気象データセンターの気候予測とイギリス統計局の人口予測から、将来の地球温暖化の影響により起こった気候変動の暑さ、寒さによる死亡者数を予測しています。
その結果、イギリスのどの地域でも気候変動による死者増える。
特に85歳以上の高齢者のリスクが高かったそうです。
ここでわかったことは、気温が1℃上昇すると死亡率が2.1%上がるということ。
医療的に見れば、熱中症の重症化がすぐに思い浮かびます。
気温が1℃低下すると、死亡率が2.0%上がるということでした。
医療的に見れば、寒さによる血液循環の滞りや、神経の働きの異常による病が思い浮かびます。
この研究では、地球温暖化の影響で、暑い日は現在よりも3倍増加するが、寒い日は減るであろうという予測です。
もう一度いいますが、これは、イギリスのみの研究です。
世界では、地球温暖化の影響で、寒さが増す地域も出てきます。
医療に用いる薬の開発
ペニシリンはアオカビから発見されました。
医療では治療薬として最初に使われた抗生物質です。
このアオカビの培養液中に抗菌作用を示す物質のあることを発見したのが、1928年イギリスの細菌学者フレミング。
ブドウ球菌の培養中に偶然アオカビが培地に混入。
その周辺でブドウ球菌の溶菌現象がおこっているのを確認したのです。
その物質をペニシリンと命名しました。
化学療法と言っても、化学的に抽出、合成した薬品だけではありません。
微生物がつくり出すペニシリンのような抗生物質。
植物の成分を抽出してつくられた薬品なども含めて、化学療法薬と呼ばれています。
ここで触れておきたいのが地球温暖化の原因となる森林破壊です。
アマゾン自体も、地球温暖化の影響で森林自体の気候がおかしくなっています。
アマゾンは「世界の肺」といわれることから、地球温暖化防止の立役者になるべきものです。
それと同時に「生物の宝庫」ともいわれています。
驚くべきことに地球上の生物遺伝子資源の約半分が生息。
そのうち全体の2%の生物種しか明らかになっておらず、残りの98%は未だ不明ともいわれています。
医療の面で見ると、アマゾンには人の病に有効な新薬の源がまだ98%眠っている可能性が高いのです。
地球上の全ての生態系は連なっています。
互いの関係性の上に、自然の摂理に従い成立をしているのです。
地球温暖化の影響で地球全体の生態系が狂い始めると、アマゾンだけではなく、まるでドミノ倒しのように一気に進んでしまうのです。
森林伐採の影響でアマゾンは今後50年の間に姿を消すといわれています。
医療の面での、地球温暖化の影響を考えると、アマゾンからの新たな新薬のもととなる生物種の発見は難しくなるでしょう。
感染症の拡大
地球温暖化により、今まで寒さにより死滅していた感染源となる虫が拡大します。
たとえば蚊が媒介となるマラリア、デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱。
地球温暖化によって媒介主となる蚊の生息域が拡大することは確実です。
しかし日本のように都市化が進み、衛生状態が良い国では、マラリアが再流行する可能性は低いのです。
マラリアについて詳しく説明しましょう。
マラリア原虫を蚊が媒介することで、伝染していく病気です。
患者の血を吸った蚊が、また別の人を刺すことによって感染が拡大します。
マラリアの感染条件3つ
①マラリア患者の増加:地球温暖化の影響によりマラリア流行地域の拡大。
今まで安全だった地域での感染が拡大し、夏だけの流行が1年中流行するようなことが挙げられます。
②媒介主である蚊の生態:マラリア媒介蚊は日本では2種類確認されています。
三日熱マラリア(比較的に軽症)を、媒介するシナハマダラカは日本全国に分布。
一方、熱帯熱マラリア(重度)を媒介するコガタハマダラカは沖縄の宮古島、八重山諸島に分布しています。
今のところ、沖縄本島では確認されていません。
しかし地球温暖化が今後ますます進み、気候変動により熱帯化した場合、沖縄本島から、九州、四国の太平洋地域にまで拡がるとの予測もあります。
③蚊に刺される人:マラリアを媒介した蚊に刺される可能性が高い場所に住んだり、生活をしている人が問題になります。
マラリア媒介蚊である、コガタハマダラカは特に重症化するだけでなく、その住処が問題なのです。
山すその小川や渓流を好んで生息し、飛べる距離もごく狭い範囲に限られてます。
一見そういった場所へ行かなければ大丈夫そうですがではなぜ問題なのでしょうか。
それは、農作業や牧畜、山仕事などに従事している人が刺される可能性があるからです。
多くの市民にとってはコガタハマダラカに刺される危険性は非常に小さいといえます。
しかし、仕事として媒介蚊の生息する場所に行く人は、いく回数が多いというリスクとともに、リスクに対する用心があります。
それよりも観光などで訪れた人が肌を露出し、媒介蚊に刺された場合の危険性も出てくるでしょう。
現在、日本の医療機関では東京都健康安全研究センターにおいて、マラリアだけでなく、デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱などを、媒介する蚊について調べられています。
マラリアが流行するためのもう一つの条件
地球温暖化が進むとどうなるでしょう。
暖かくなると、マラリア病原体は暖かいほうが生育条件が好条件となるため、そのものの成長速度が速くなり、かなりの短期間で活性化します。
そしてまたマラリアを媒介する蚊の寿命が延びます。
このことからわかるのは、マラリア病原体が活性化するまで生き延びた媒介蚊が人を刺す可能性が高まるということです。
言い換えると先に紹介したマラリアの流行する条件である①マラリア患者から次の感染が起きるということになります。
さらに、暖かくなると蚊の成長速度も速くなります。
蚊は卵から幼虫、さなぎ、そこから成虫へと成長していきます。
蚊に限ったことではないのですが、多くの虫は、幼虫からさなぎ、そこから羽化して成虫、になるまでの時間が短くなるのです。
地球温暖化の影響で世界の平均気温が上昇すれば、蚊の世代交代が速まります。
卵が次々と産みつけられ、次々と蚊が発生をしていけば、それまでは蚊の密度が低かった地域でも、マラリア媒介蚊の増加で、密度が高くなります。
日本についても、沖縄の、宮古島と八重山諸島にわずかにしか生息していなかったコガタハマダラカが、その生息範囲を拡げるだけでなく、生息期間、密度を高める可能性があるのです。
まとめ
地球温暖化の影響と医療を考えた時に見えてくるのは、何でしたか?
人類のエネルギーの消費活動が引き金となり起こった地球温暖化による気候変動。
産業革命以降、豊かになっていった人々の暮らし。
その反面、地球温暖化が与える影響が、人々の暮らし、医療分野である命にまで及ぶのです。