2016年11月7日から同18日までの2週間、モロッコのマラケシュで、COP22国連気候変動枠組条約第22回締約国会議が開催されます。
COP22ではCOP21で、採択された「パリ協定」の詳細なルール作りが本格化します。
こうした中で、地球温暖化対策や、環境問題で、世界でも先進的な考えと実践をしてきた国がドイツです。
地球温暖化対策は、ドイツでどのように行われているのでしょうか。
目次
エネルギーを移し変える
ドイツは、Energiwende(エネルギーシフト)と呼ばれる運動で地球温暖化対策で世界から注目をされています。
これは、化石燃料を減らすこと、原発を撤廃すること、そして再生可能エネルギー中心の経済へ移行することを目的とした動きです。
目標は、地球温暖化の原因である化石燃料燃料にたよらないようにすることと、再生可能エネルギーである太陽光発電、風力発電などの普及と、市民レベルからの省エネ運動です。
それにより、産業や経済が発展できると証明しようということです。
ドイツの国民は、このエネルギーシフトを、好意的に受け止めているようです。
産業や経済が発展できると証明、これは地球温暖化対策を論じるうえで、何かと問題になることです。
産業や経済の発展にはエネルギーの消費が伴います。
そのエネルギー消費を化石燃料に頼ってきたのが原因で、地球温暖化は進んでしまったのです。
しかし、地球温暖化対策で、エネルギー消費を抑えようとして、エネルギー源を化石燃料に頼らざるをえない場合、自国の経済発展が損なわれるのではないかという懸念がありました。
しかしドイツでは「やればできる」という姿勢を持ち地球温暖化対策をしながらも経済的な成長をみせています。
実は過去20年にわたる経験がその自信につながっているのです。
20年前、1990年代と2016年現在までの間に、めざましい進歩を遂げた再生可能エネルギーは、信頼性があがっただけでなく、価格はかつての予想以上に下がっているのです。
ドイツにおける再生エネルギーでは、電力部門の割合は、たったの10年間で6%から25%と、4倍以上にまで増えました。
クリーンエネルギーである太陽光パネルと風車は、晴れた日や風の強い日に、ドイツ国内の電力需要のじつに約半分を供給するまでにいたります。
ドイツでは電力での再生可能エネルギーの割合は、2020年までに40%を超えると推計されています。
この推計はドイツの再生可能エネルギーの目標値よりも上回るものです。
こうした再生可能エネルギーの利用による地球温暖化対策は、再生可能エネルギーを中心とした経済を堅実なものとしたシナリオを描いているからこそ。
無謀な計画ではないことは、このシナリオの作成に、多くのドイツの研究機関や政府関連機関が、データを分析し、構築してできたものだからなのです。
エネルギーシフトは市民が主役
ドイツには再生可能エネルギー法というものがあります。
このなかに「再生可能エネルギーによって発電されたすべての電気を優先し、送電網に接続することを保証し、適切に利益を得ることができる」とされています。
こう聞くと、さぞ大きな会社がになっているのではないのかと、日本人は考えがちです。
しかし、ドイツでの2011年までの再生可能エネルギーへの投資、その半分以上は、実は小規模な投資家によるものでした。
私たち日本人の考えとは裏腹に、大企業は、比較的小さめな投資しか行っていないのです。
このことから、再生可能エネルギーへのエネルギーシフトは、中小規模のビジネスを強くしました。
結果的に、再生可能エネルギー法は、ドイツ国民の庶民レベルから、再生可能エネルギーを作り出す権利を得たことになります。
この再生可能エネルギー法で、地域のコミュニティや、市民自身が再生可能エネルギーを作り出す権限を与えられたことでドイツ全土にわたって地域のエネルギー革命が起こりました。
こうしたエネルギー革命により、コミュニティは新規雇用や税収増という利益を得るようになっています。
地球温暖化対策と、経済的発展が敵対しないような、実によく考えられたシナリオです。
ドイツの太陽光発電の量は世界第2位で、3969800メガワット。
1位は中国4348000メガワットですが、国の面積に比べてどれだけ多くの発電がされているのかがわかります。
ドイツでは、太陽光パネルの設置に関わるシステム価格が、2006年から2012年までの6年間に66%も安価になりました。
太陽光発電のシステム価格の安価化と、再生可能エネルギー法による新規雇用や税収増という利益を得るシステムはまだ世界にはない実績です。
ドイツのコストの低下により、これから地球温暖化対策に本格的に乗り出そうとしている他の国々にとっては再生可能エネルギーにおいてドイツは良いお手本です。
こうした技術をドイツが世界のほかの国に売り出すことでドイツの国益も上がります。
世界をみまわすと、ドイツよりも太陽エネルギー源がもっと豊富にある国はたくさんあります。
日照条件の良い国に設置された場合、同じ太陽光パネルを使用したとしても、ドイツの発電量よりも2倍も発電が可能な地域もでてきます。
ドイツのエネルギーシフト政策の再生可能エネルギー部門では、雇用問題も解消しています。
実に再生可能エネルギーに関する雇用が、国内で38万人創出されているのです。
今までのエネルギーの雇用とくらべるとかなりの規模にあたります。
この中には製造業に従事する人も含まれますが、他の多くは、設置やメンテナンス業の従事者です。
ドイツは地球温暖化問題を解消しつつ、新エネルギーの開発による新たな雇用を生み出し、経済的、財政的な危機をうまくしのいでいるのです。
はじめに紹介したとおり再生可能エネルギーを中心とした経済を堅実なものとしたシナリオを描いているからこそ実現できたもの。
無謀な計画ではないことは、このシナリオの作成のなかで、ドイツの気候・エネルギー政策は「国内の製造基盤を維持する」よう上手に設計されていたのです。
産業界には、エネルギー効率の改善化が促されていますが、その負担を軽減する、規制除外措置のもあったりもします。
まとめ
よく思い違いされる「地球温暖化防止に積極的になると、経済的な成長が滞る」こととは反対なことがドイツでは起きています。
地球温暖化防止策のひとつ、再生可能エネルギーの推進は、ドイツ国内における電力を大量に使うような産業分野においてはとても好都合です。
なぜなら、2012年ですと風力発電、太陽光発電の価格は、卸売電力市場で10%以上低下しているためです。
安い電力は、企業のにとって経費をおさえられるので好都合なのです。
常に火を絶やすことのできない鉄鋼や、セメントなどの産業分野では、この安いエネルギー価格の恩恵を享受しています。
ドイツのエネルギーシフトの効果は、この成功からより拡大するでしょう。
こうした高い付加価値のついたエンジニアリング技術開発を『ドイツ製』としていきたいのです。
さらなる太陽光発電装置や、風車の効率化、文章中では触れませんでしたがバイオマス、水力発電や蓄電システムのさらなる効率化と発展は企業を潤すだけでなく、結果的にドイツの国自体を潤すのです。
こうしたエネルギー効率化技術などへの需要は、近年さらに高まっています。
ドイツは、地球温暖化対策を率先的に実行する者としての利益を得ます。
す。
地球温暖化の原因の化石燃料をエネルギー源とせずに、再生可能エネルギーへ焦点を当てることで、企業投資に対する将来性のアプローチにもなります。
地球温暖化対策を、化石燃料の省エネ対策だけでは、できないのが現状です。
将来、世界が再生可能エネルギーへ転換する頃、ドイツは、再生可能エネルギーの先駆者としての大きな利益を得ます。
そのマーケティングにおいて、世界に先駆けての地球温暖化対策から、得た熟練、質の高い技術、そしてサービスを提供するポジションについているでしょう。
■エコライフ
地球温暖化対策に積極的に取り組むドイツでは、市町村レベルで、省エネとエコライフが定着しています。
中学生の英語の教科書でも紹介されているドイツのミュンスターのエコライフ。
この町では自転車専用の道路と信号が整備されています。
自転車の利用はこの10年で2倍に増えました。
バス専用の信号も整備されており、マイカー通勤をやめ、バスや自転車で通勤をする人が増えています。
自転車で通勤することは、健康にも良いと、地球温暖化対策をしながら健康づくりにも役立っています。
また、小学校などの公共施設では、冬場の暖房の使用の際、設定温度を2度下げることが励行されています。
少し寒いような日もあるでしょうが、教育の現場で地球温暖化を身近なものと、教えられるいい機会でしょう。
こうした努力により、1990年代より、10%以上の二酸化炭素の排出量削減ができました。